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繊維ロープにおけるJIS規格改正の解説
JIS L 2703 、2704 、2705 、0706、 2707-1984
ビニロン、 ナイロン、 ポリエチレン、 ポリプロピレン、 ポリエステルロープ

1. 改正の経緯
合成繊維ロープの旧規格には、次のものがある。
(a) ビニロンロープ  JIS L 2703 - 1978
(b) ナイロンロープ  JIS L 2704 - 1978
(c) ポリエチレンロープ  JIS L 2705 - 1976
(d) ポリプロピレンロープ  JIS L 2706 - 1976
(e) ポリエステルロープ  JIS L 2707 - 1982
  これらの規格のうち(a)〜(d)は1969年に制定された規格に国際単位を導入するために、部分開成を行ったものである。また(e)のポリエステルロープについては、1980年代に入りこのロープの性能が他の合成繊維ロープと同等又はそれ以上のものであることが確認され、広い分野で使用されるようになったので規格化された。
  この間、各種の合成繊維を原料とした主なロープについては国際規格(※1)(以下、ISO規格)が制定されている。ISO規格は現在船舶用や陸運用のロープに、また漁具として使用されるロープの規格として広く応用されつつあるので、国内規格も可能な限り国際的に整合させることが重要となり、また、急務となった。
  このことから工業技術院はISO規格及び諸外国の規格を調査研究し、JISとの整合性の有無を検討することとした。この調査研究は昭和56年度及び昭和57年度にわたって日本繊維ロープ工業組合に委託され、実施された。この結果は”繊維ロープの品質(線密度及び引張強さ)に関する調査研究報告書”で報告された。
  ところでビニロンは我が国で発明された合成繊維であるが、これを原料として製造されるロープは、その取扱いが容易であることから国内の広い分野で使用されている。このロープは湿潤時に引張強さが若干低下することと、及び使用中にロープが効果することがある。これらの問題に対処するため、ポリエステルを混紡したビニロン紡績糸でロープが製造されるようになった。ポリエステル混紡ビニロン紡績糸からなるロープは近い将来、ビニロンロープの主体となるものと思われる。
  今回の改正の主な目的は、ISO及び諸外国規格の調査研究結果を踏まえて、JISとISO規格との整合を図ること、およびビニロンロープに新たな種類を追加して、これに伴う品質基準を規定することにある。改正案は日本繊維ロープ工業組合技術委員会が起案し、昭和59年6月25日の日本工業標準調査会繊継部会ロープ・より糸専門委員会で審議され、同年7月17日の繊継部会で承認された。
  なお合成繊維ロープの規格として新たに規定すべきものとしては、ポリプロピレンの扁平断面糸やフィルムなどを用いたロープがある。しかし、これらの材料の製造方法、形状などは広範にわたり、現状ではロープの品質基準値を制定するには検討すべき問題が多いので、今回の改正にあたっては、検討の対象から除外した。
2. 改正内容の概要 
  改正した内容のうち、まずISO規格との整合を目的とした改正で特記すべき事項として”ロープの太さ”がある。旧規格はロープの太さの呼び方をロープの直径を表す寸法とした。この直径に対応させて質量及び引張強さを規定していた。
  マニラ麻ロープなど天然繊維のロープと同様に合成繊維ロープの直径はロープの構造や打ち方によって変わる。また引張強さはロープの単位長さ当たりに含まれる原料繊維の量、すなわちロープの線密度の大小に影響されるところが大きい。したがって、ロープの直径を基準として区分するよりは線密度を基準として区分し、線密度と引張強さを対応させるのが合理的である。ISO規格は線密度と引張強さを対応させ、直径を参考値として示している。
  ロープの直径は、ロープの呼称として古くから使用されてきた尺度である。そこで新規格では直径を規格とはしないが、呼称太さとして用いることとした。
今回の改正に共通する主要な内容を以下に項目別に記す。
(1) 線密度及び質量
  旧規格では太さの項でロープの直径を規定していたが、新規格では太さの項を廃止した。直径に替えて新規格では線密度によってロープを区分したので、旧規格の質量の項を線密度及び質量と改め、この項で線密度、質量及び許容差を定めた。
(2) 伸び率
  試験方法で定める初荷重はISO規格(※2)に準じたものに改正した。旧規格では伸びを測るとき、規定引張強さの荷重をかけて測定し、この伸びから伸び率を算出した。ISO規格(※2)では伸び率を引張強さの75%の荷重をかけたときの伸び率と定義している。このように伸び率を定義しても実際上支障はなく、試験作業の安全性は高くなることから、新規格ではISO規格の方法を採用した。その結果、一部のロープの伸び率の上限を下表のように改正した。
※1 ISO 1140-1975 (三つ打ちポリアミドマルチフィラメントロープ)
ISO 1141-1975 (三つ打ちポリアミドマルチフィラメントロープ)
ISO 1346-1975 (三つ打ち及び八つ打ちポリプロピレンモノフィラメント又はフィルムロープ要求特性
ISO 1969-1976 (三つ打ちポリエチレンモノフィラメントロープ)
※2 ISO 2307-1972 (ロープ物理的及び機械的特性の測定)
ロープの種類 伸び率%
旧JIS 今回の改正
ポリプロピレンロープ
マルチフィラメント 40 45
モノフィラメント 35 40
紡績糸 45 50
ポリエステルロープ 35 40
(3) 初荷重
  旧規格ではロープの構造及び太さによって規定の引張強さの1%から5%の荷重をもって初荷重とした。新規格ではこのような複雑な初荷重の決め方を回避することとし、ISO規格で用いている初荷重の適否を実験値に基づいて検討した。その結果、ISO規格で使用されている荷重をJISの線密度による区分に適用するように一部分修正して使用することとした。
  なお、今回の改正では初荷重を各種の合成繊維ロープに共通するように規定した。
  ビニロンロープについては、規格の中にポリエステル混紡ビニロンロープを加えることとしたので、これに伴い適用範囲及び種類を改正した。
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